2013/12/18

中国で新型(H10N8型)鳥インフルエンザの死者確認!


( 2013.12.18 )

● 中国で新型(H10N8型)鳥インフルエンザの死者確認!



 中国の政府系メディアの「新華社」が18日報じたところによると、中国の江西省に住む73歳の女性が、新型鳥インフルエンザウイルスのH10N8型に感染して死亡した。

 死亡した女性は同省の南昌出身で、生きた家禽類を売る市場に行ったことがあり、11月後半から病院で治療を受けていたが、12月6日に呼吸器不全で亡くなったという。

 女性が感染していたのが、鳥インフルエンザのH10N8型ウイルスであることが、中国疾病対策予防センターで確認されたというが、世界保健機関(WHO)のサイト上には、同ウイルスに関する情報はなく、香港メディアは、H10N8型ウイルスの人への感染が確認されたのは世界で初めてと報じている。

 新華社は複数の専門家の話として、他に感染者は確認されておらず、感染拡大のリスクは低いと報じている。











2013/12/05

中国の大気汚染問題 PM2.5


( 2013.12.05 )

● 韓国でも深刻PM2.5問題、ソウルでも初の「注意報」発令!


 中国で深刻な大気汚染を引き起こしている微小粒子状物質(PM2.5)への懸念が、韓国でも高まっている。

 冬のこの時期、偏西風に乗って中国からの微小粒子状物質(PM2.5)が高濃度で流入、韓国国内での発生分と合わせ基準値を超える日が続いていたが、ソウルでは5日、1立方メートル当り85マイクログラム以上という状態が2時間以上続き、初の「注意報」が発令されたという。

 ソウルでは、今年の10月より国に先立ち市内25ヶ所にPM2.5の観測点を設け、速報値を公表し市独自の環境基準で警報を出す体制が取られるようになり、初めての警報が出されたことになる。


 韓国では、PM2.5の観測網がまだ整備中のため、粒子のより大きなPM10の観測が主体で、これに関する韓国の環境基準は、1立方メートル当りの1日平均濃度が100マイクログラム以下としているが、4日のソウル市内で169マイクログラムを観測。

 ソウルでは基準を超えたのが、昨年では5日間だけだったのが、今年に入ってから4日までにすでに14日間も観測されている。

 ソウル市でも近年は、大気汚染防止のためディーゼル車の排ガス規制の強化などの対策が取られ、2007年頃はPM10の年間平均濃度が61マイクログラムであったのが、昨年度は41マイクログラムにまで減少したが、今年になって44マイクログラムへと増加、再び汚染悪化していることから、中国からの大気汚染物質の飛来が環境悪化の要因とみられていて、越境汚染問題になりつつある。

わが国環境省の研究データによると、韓国のPM10による大気汚染のうち中国からの流入分が30~40%を占めると見られている。




( 2013.12.02 )

● 中国・上海で大気汚染PM2.5、最悪レベル!


 中国・上海市で、2日午前、大気汚染指数が300を上回り、6段階の汚染レベルで最悪の「厳重汚染」となり、上海市当局は今年初めての汚染警報を出した。

 汚染原因の一つである微小粒子状物質(PM2.5)の濃度が、1立方メートル当り290マイクログラムを超え、国際基準値(1立方メートル当り75マイクログラム以下)の約4倍近くに達したため、建設現場での一部作業を停止させ、屋外でのスポーツも中止するよう求めた。

 上海市内では、11月30日深夜から大気汚染がひどくなり、1日に開催された「上海国際マラソン」ではマスク姿のランナーもいたとか。
 大気汚染が最悪な中での国際マラソン開催に、さすがの中国人でも批判の声があがっていたが、メンツを気にする国民性から「大気汚染のため中止します」など口が避けても言わないだろう。

 上海には約5万7000人ほどの日本人長期滞在者がいると見られていて、市内にある2つの日本人学校は屋外での体育や観察授業などを中止し、休み時間も校庭に出ないよう指導がなされたと言う。

 今年になり日本人駐在員の中には、家族を日本に一時帰国させている人も増えてきているとの報道もある。




( 2013.09.30 )

● 国内のPM2.5測定局整備に、財源確保困難で遅れ懸念!


 環境省は、国内のPM2.5の今年度末までの観測局設置数を、約1300ヶ所の目標に対し、803ヶ所にとどまる見通しを発表した。

 環境省の全国自治体へのアンケートによると、都道府県など測定局の設置が必要な130自治体のうち、今年度中に測定局の整備を終えるのは45自治体で、2015年度末までの整備予定を含めても57自治体にとどまる見通し。

 整備が遅れる理由として、財源確保が困難とする自治体が多いいという。






● 大気汚染物質・PM2.5問題について

①.PM2.5とは

 大気中に浮遊している粒子状物質には、物の燃焼などによって発生するばい煙(すすなど)、粉じんや、硫黄酸化物、窒素酸化物、揮発性有機化合物等のガス状大気汚染物質が、主として大気中での化学反応により粒子化したものなどがある。

 近年、従来から環境汚染物質として対策が進められていた浮遊粒子状物質、PM10(SPM:10μm以下の粒子)よりさらに小さな粒子、PM2.5(2.5μm以下の粒子)による健康への影響が懸念されている。


②.健康への影響

 浮遊粒子状物質、特にPM2.5は、非常に小さい(1mmの千分の2.5以下)ため肺の奥深くまで侵入し沈着するため、肺がん、ぜんそくなど呼吸器系、循環器系の健康への影響が懸念されている。


③.日本の環境基準について

 現在、健康の維持に望ましい水準として設定している環境基準値
 
 1年間の平均値 ・・・ 15μg/m3 以下 かつ 1日の平均値 ・・・ 35μg/m3 以下 

(平成21年9月設定)
・ 環境省の注意喚起のための暫定的な指針

 (環境基準) 1日の平均値 : 35μg/m3 以下
         健康を保護する上で維持されることが望ましい基準

 (レベルⅠ) 1日の平均値 : 70μg/m3 以下
         特に行動を制約する必要は無いが、高感受性者は、健康への影響が
         みられることがあるため、体調の変化に注意する。

 (レベルⅡ) 1日の平均値 : 70μg/m3 以上
         不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らす。
        (特に高感受性者は、体調に応じて、より慎重に行動することが望まれる。)


④.主な発生源

 人為的なものとして、工場等の石油・石炭を燃料としたボイラー、燃焼炉などからのばい煙、自動車、船舶、航空機などの排気ガス、コークス炉、鉱物の堆積場などからの粉じんの飛散などが考えられている。

 また、火山活動、砂漠(土壌)、海洋、気象現象(台風、竜巻など)からの自然的起源とするものなどがある。


⑤.国内のこれまでの対策

 戦後の高度経済成長期に、都市部や臨海工場地帯(コンビナート)周辺において、工場や自動車からの煤煙、排気ガスなどの大気汚染物質により、重大な健康被害をもたらす公害事件が社会問題となり、大気汚染防止法に基づく工場・事業所などの煤煙の規制や、自動車排気ガスの規制が強化されたことで、年間の平均的な濃度は減少傾向になる。

 かっては、京浜工業地帯でもばい煙などにより、いつもどんよりとした曇空のような天気に、連日のように「光化学スモッグ注意報」が発令されていた。


⑥.近年の経済成長する中国からの越境汚染が新たな環境問題に!








● 大気汚染関連情報システム


 ・ 「そらまめ君」 : 環境省が提供する全国の大気汚染物質測定データ

 ・ 大気汚染予測システム : 国立環境研究所が提供する大気汚染物質の予測情報













2013/12/04

ミナミセミクジラの謎の大量死


( 2013.12.04 )

● 南米・アルゼンチンのクジラ、生息海域で大量死の謎!


南米・アルゼンチン南部のバルデス半島沖のクジラの生息海域で、ここ数年間に子どものクジラの死亡例が急増していると言う。
この海域では、1971年に個体数の監視を開始して以降、1971~2011年の間に幼体と成体を合わせて約630頭の死亡が確認されているが、そのうち77%が2003~2011年の間に発生していて、その内の89%が子どものクジラであった言う。

この大量死の原因は、まだ解明されていないが、餌の不足・病気・ドウモイ酸などの毒素や有害藻類の発するサキシトキシンなどの毒素の影響とする説などがあるが、今のところ共通の死因は特定されていない。

特に子クジラの高い死亡率に注目すると、餌となるオキアミなどの不足や、毒素や汚染物質に汚染された藻やオキアミなどを餌として捕食した結果、体内に取り込まれた汚染物質や毒素の影響をより受けやすい子どものクジラが犠牲となる可能性が指摘されている。













2013/11/01

中国産・輸入食品の安全性は?


( 2013.11.01 )

● 今や、中国産・食品の危険性は中国人さえ常識!



 中国産の「毒入り冷凍餃子事件」以来、中国産食品に対する関心の高まりとともに、中国・国内での食品をめぐる驚くようなニュースが毎日のように報じられるようになってきたこともあり、日本人の中国産食品に対する不信感は高まる一方、その危険性は今や常識となっている。

 殺鼠剤で殺した鼠の死肉を羊肉と偽って路上で販売し、その肉を食べた男性が中毒症状で北京の病院に運ばれたり、青いマンゴーをホルモン剤で黄色にし、熟したように見せかけて売ったり、ピータンに工業用の硫酸銅を使い、業者が検挙されるなど、「食品汚染」はますます悪化している。


 中国では、以前から大気汚染以上に土壌汚染、河川の水質汚染が深刻で、これらによる農産物の汚染が問題となっている。
 水銀、鉛、ヒ素、カドミウムなどの重金属汚染やBHC、DDTなどの有機塩素系農薬汚染が指摘され、富裕層の中には中国国内の野菜や食肉、乳製品などの農産物を信用せず、日本の割高な農産物、海産物に人気がある。
 

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  これに対して、中国産野菜の日本への輸入は年々増加しているという。「毒入り冷凍餃子事件」以来、スーパーなどでの取り扱う量は減少傾向にあるものの、外食産業でのコスト削減のために、割安な輸入食材の需要が高まっている。

 ただし、我が国の検疫制度はザルと言い切る専門家もいるほどで、現在行われているモニタリング検査は、輸入品の一部サンプルを抜き出し、残りは流通させたまま検査をしている。
 つまり、違反が見つかった時、すでにその食品は市場で販売されており、私たちの胃袋の中ということがあり得るのである。

 実際、「毒入り冷凍餃子事件」ではスーパーで購入した後、食事で食べた家族が被害にあっている。

 そもそも日本の検疫検査は輸入食品のうち1割にしか実施しておらず、残り9割の食品はノーチェックで国内に入っていて、店頭にならべられ販売されているため、実際に被害にあわないとわからないということになり、非常に脆弱な検疫体制との指摘もある。

 現在、中国から日本に輸入される食料は年間400万t、輸入食材の1割以上を占める。うち9割が野放し状態のため、私たちが知らないうちに中国産を口にしている可能性はかなり高い。


下記のリストは今年(平成25年)3月以降、食品衛生法違反が見つかった中国産輸入品のうち、違反品名と違反毒性物質のほんの一例に過ぎない。

(中国産・輸入食品汚染の一例)

・大粒落花生/アフラトキシン(カビ毒)
・炒ったスイカの種子/サイクラミン酸(人工甘味料)
・炒ったピーナッツ/アフラトキシン(カビ毒)、TBHQ(酸化防止剤)
・黒糖ピーナッツ/アフラトキシン(カビ毒)
・生鮮ケール/ヘキサクロロベンゼン(殺菌剤)
・生鮮ごぼう/パクロブトラゾール(殺菌剤)
・烏龍茶/インドキサカルブ(殺虫剤)、フィプロニル(殺虫剤)、プロファム(除草剤)
・烏龍茶エキスパウダー/サイクラミン酸(人工甘味料)
・トマト茶/二酸化硫黄(漂白剤)
・豚肉スライス/サイクラミン酸(人工甘味料)
・豚生姜焼きパック/大腸菌群
・かもの珍味(麻辣味)/大腸菌群
・炭火焼き牛タンスライス/大腸菌群
・ボイル刻みたこ/大腸菌群
・冷凍切り身がれい(生食用)/大腸菌群
・冷凍切り身かれい昆布〆スライス/大腸菌群
・冷凍ししゃも味醂干し/大腸菌群
・冷凍いか類/細菌
・冷凍えだまめ/ジフェノコナゾール(殺虫剤)、大腸菌群
・冷凍こまつな/大腸菌 冷凍たまねぎ/細菌

※厚労省「輸入食品等の食品衛生法違反事例」平成25年3~9月分より抜粋









2013/05/31

米国で未承認の遺伝子組み換え小麦見つかる


( 2013.07.30 )

● 米国モンサント社の未承認・遺伝子組み換え小麦の研究施設外自生


  米国・農業関連企業「モンサント」社が開発した除草剤に耐性のある未承認の「遺伝子組み換え小麦」が、今年の4月にオレゴン州の民間の農場で自生していたのが発見された問題で、米国農務省の動植物検疫関係当局は、約3ヶ月間の調査した結果、原因はまだ不明な点があるものの、現時点で最初に自生が確認されたオレゴン州の特定の農家の農場1ヶ所のみにとどまり、それ以外の場所での自生は見つかっておらず、商業的にも出回っていないと述べた。

 当局は、混入の原因と影響の範囲について、引き続き調査をするとしている。

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 「モンサント」社は、「ラウンドアップ・レディ」と名付けたこの遺伝子組み換え小麦を商業化する計画だったが、食品の安全性に疑問を持つ消費者団体の反対にあい、2004年以後研究を停止していたもの。




( 2013.05.31 )

● 米国の農場で未承認の遺伝子組み換え小麦が発見!


 米西部オレゴン州の農場で、除草剤への耐性を持つ未承認の遺伝子組み換え小麦が見つかった問題で、小麦輸出への影響を懸念する米農務省は原因究明を急いでいる。

 同州の農家が除草剤をまいたところ、枯れない小麦が発見され、オレゴン州立大学の研究員が検査した結果、除草剤に強い遺伝子組み換え小麦だと判明した。

 この小麦は農業関連大手「モンサント」が試験栽培していたが、世界的な反対を受け2005年に開発を終了していた。

 農務省によると、この遺伝子組み換え小麦は人体への影響はなく、流通も確認されていないとし、オレゴン州とその周辺地域でサンプル採取や聞き取り調査など、原因究明に努めている。

 これを受け、日本の農林水産省が同州で生産された小麦を政府の買い入れ入札から外すことを決定したほか、欧州連合(EU)も米国から輸入された小麦の検査を強化することを明らかにした。











2013/05/14

ミツバチの窮状、原因は殺虫剤か?


( 2013.05.14 )


● 欧州で養蜂ミツバチ、謎の喪失!


 農場の作物が受粉する季節が巡ってきた2013年春、ハチが再びニュースに取り上げられている。

 欧州連合(EU)は先月29日、ミツバチの減少に関連性が指摘されているネオニコチノイド系殺虫剤の使用を2年間にわたって禁止すると発表した。この欧州の動きをアメリカは静観しているが今年、養蜂事業者と環境保護団体、消費者団体から成るグループが、殺虫剤の危険を放置していると環境保護庁(EPA)を訴えた。

  数年前から科学者たちは、ハチの将来を憂えている。また養蜂事業者たちは、危機が明らかになって数年後の現在も飼育コロニーの問題が解消されておらず、ハチの窮状は変わらないと考えている。

  現在の危機が表面化したのは、国中の養蜂事業者がハチの大量喪失を報告した2006年秋だ。平均で巣箱の3分の1以上が失われ、90%に達するケースもあった。飛び去ったハチが戻らず、巣箱に残るのは女王バチのみ。こうした前例のない喪失が短期間に集中し、手掛かりとなる死骸も見つからない。

  謎の喪失は蜂群崩壊症候群(CCD)と呼ばれ、まるで周期的な病のように現在は落ち着いている。ただし、ハチたちはいまだ命懸けで戦い、コロニーはかつてないほど弱体化している。2012年から2013年の最新の冬期データによれば、アメリカの養蜂事業者は平均で巣箱の45.1%を失っている。これは1年前の冬より78.2%も多い数字だ。業務用の巣箱は全体で31.1%失われており、過去6年と変わっていない。現在、大部分の養蜂事業者は15%の喪失を“許容範囲”と考えている。 

◆ 前例のない危機

  欧米諸国の大規模農業の生産性は、管理されたミツバチに依存している。花粉を運び受粉するという非常に重要な役割を果たしているからだ。農場から農場にトラックで運ばれる“季節労働者”の貢献度は、食料生産の約3分の1(およそ100の主要穀物)、金額では150憶ドル(約1兆5000億円)以上にのぼる。

  CCDが表面化すると、アメリカ農務省の農業調査局(Agricultural Research Service)と米国食品・農業研究所(National Institute of Food and Agriculture)が共同で研究と対策を開始。しかし、いまだ決定的な証拠が見つかっていない。最新の研究は、崩壊したコロニーのハチの内臓に大量の病原体の存在を示している。おそらく原因はウイルス感染だ。

  ただし、これは原因の1つと考えられている。ハチの専門家であるメリーランド大学のデニス・ファンエンゲルスドープ(Dennis vanEngelsdorp)氏は、人間のHIVウイルス感染に例える。「HIVウイルスが直接の原因ではない。免疫力が低下し、肺炎などで死に至る」。ハチの状況は少し違うかもしれない。それでも、免疫力が低下し、「病気が転換点になることはまず間違いない」。

  では、ハチが病気にかかりやすくなる原因は? なぜ免疫力が低下するのだろう? これらの問題は未解決で、150憶ドルの食料生産への危機的状況は続いている。

 ◆ 殺虫剤の脅威

  EUの対応が示すように、ハチの敵の1つは殺虫剤だ。しかし直接駆除されるわけでもなく、「適切に使用すればハチなどの受粉媒介者にとっても安全では?」という議論も盛り上がっている。それでもやはり、間接的な原因としての殺虫剤の影響は確かなようだ。

  例えば、致死量に満たないネオニコチノイドにさらされたハチは、内臓に寄生するノゼマ病に感染しやすくなる。同系の殺虫剤はEUで禁止される一方、アメリカでは小麦やトウモロコシ、大豆、綿花に常用されている。

  ファンエンゲルスドープ氏によれば、殺虫剤そのものがコロニーの崩壊につながるわけではないという。ほかの要因と同じく、別の化学物質やストレス因子と組み合わされたときに最悪の働きをする。「相乗効果だ」と同氏は話す。「ぴったりとはまる要因が2つ組み合わされば、1+1が10になる場合もある」。そして、免疫力が低下したコロニーは悪循環に陥り、健全であれば問題にならないストレス因子にも立ち向かうことができなくなる。

 ◆ 新たな懸念

 さらに、ペンシルバニア州立大学のチームが、懸念すべき研究結果を発表した。殺虫剤の効果を高めるために常用されている補助剤(不活性成分)が、有効な“有毒”成分と同等、あるいはそれ以上の害を及ぼすというのだ。  ペンシルバニア州立大学のメリーアン・フレージャー(Maryann Frazier)氏は今回の研究に参加していないが、補助剤の配合は、「多くの場合、機密情報であり、企業が公表することはない」と説明する。「つまり、第三者によるテストで毒性を評価できない。申請された殺虫剤を評価するEPAも、有効成分のみを考慮している」。

 ◆ 降りかかるストレス

  ハチは、気候変動や異常気象だけなく、テストも規制もない化学物質にさらされている。しかも、単一作物生産地の増加で採餌に適した環境が減少し、農場から農場へとトラックで運ばれるストレスが加わる。

  現在の土地利用に強く反対する者もいる。ノースダコタ州で4代目として養蜂業を営むザック・ブラウニング(Zac Browning)氏は、「ミツバチにとって、生息環境が重要だ」と話す。「栄養に富む花が必要で。アメリカの農地の60%超を占める小麦やトウモロコシ、大豆などの作物ではない」。バイオ燃料のためにハチが犠牲になり、そのつけが回ってきていると、ブラウニング氏は嘆く。 「養蜂は単一作物生産に適応してきたが、それは健全な状態ではない」とブラウニング氏は言う。「持続可能な農業に投資すれば、まだ成長の余地はある」。

  しかし、多くの養蜂事業者と同じく、ブラウニング氏の将来に対する自信は巣箱の数とともに失われつつある。「既に一文無しも同然だ。実際に行動を起こさなければ、この産業は衰退するだろう」。そして、バラエティ豊かな食卓に貢献している小さなハチも、同様の運命をたどることになる。










2013/05/04

中国汚染食品-食肉偽装ネズミやキツネの肉も


( 2013.05.04 )

● 食肉偽装事件!


キツネやネズミの肉をヒツジの肉と偽り、中毒で死亡のケースも!

 中国公安当局がネズミの肉を羊肉と偽ったり、病死した動物の肉を流通させたりするなど食品の安全にかかわる犯罪で計2010件を摘発し、容疑者計3576人を拘束したと発表した。中国メディアが3日伝えた。

 2月から4月にかけて摘発した。「典型的な犯罪」として公表されたケースによると、キツネやネズミの肉に化学薬品を混ぜて羊の肉を装ったり、検疫していない牛の肉、病死した豚や鶏の肉を流通させたりしていた。偽装肉を食べた消費者が中毒で死亡したケースもあった。

 中国国内でも食の安全に対する意識は高まっているが、今回の摘発は、生産者側のモラルが高いとは言えない現状を改めて浮き彫りにしたといえる。









2013/04/22

中国環境汚染-中国版イタイイタイ病か


( 2013.04.22 )

● 体が青黒く腫れる「トントン病」中国で20人近く死亡!


  「頭も膝も、全身の関節が痛い。私の体はどうなるのか」  。

 毛沢東のふるさと湖南省の村、瀏陽市鎮頭鎮に住む羅金芝さんは、カドミウム中毒で体調不良が続く。 昨年2月に大脳を手術した。まだ40代なのに、昼間もベッドで過ごす時間が増えた。
  近くの工場が半導体の材料をつくる過程で垂れ流した排水が地下水を汚染したせいだと言う。

  村で最初の死者が出たのは2009年。 腫れた体が青黒く染まっていた。 村人によると、これまで同じ症状で少なくとも20人近くが死亡した。
  日本の公害病、イタイイタイ病に似ていることから、「痛痛(トントン)病」と地元では呼んでいる。

  2004年に工場が生産を始めてから、地元で取れる野菜や木の色が変わった。 尿検査をすると、村人約3千人中500人余りから、基準値を超えるカドミウムが検出された。
 工場は2011年に撤去されたが、未処理の汚染物が残され、雨が降ると流れ出す。

  羅さんたちが昨年、土を地元から離れた江蘇省の大学に持ち込み検査をしてもらったところ、カドミウム汚染は工場閉鎖前よりもさらに進んでいた。
  「こんな汚れた土地で作った作物が売れると思う? 私たちは仕方なく食べている」  羅さんらは、集団移転や賠償を求めている。 
 
 村人たちは温家宝(ウェンチアパオ)前首相に直訴を企て地元警察に捕まったこともあるが、新たに首相となった李克強(リー・コーチアン)氏にも訴える機会を探る。









2013/04/10

中国環境汚染-家畜や魚…大量死、調べず安全宣言


( 2013.04.10 )

● 「調査する前から、まず安全宣言!」これが中国の基本?


 鳥インフルエンザ(H7N9型)の感染が広がりを見せている中国で3月以降、各地の川や湖で大量の動物の死骸が相次いで発見され、飲用水や食の安全に対する市民の不安が高まっている。
 風評被害の拡大を警戒する中国当局は、メディアに対し報道規制を強める一方、はやばやと「安全宣言」を発表するが、それが市民の不信感を一層募らせている。
  3月上旬から中旬にかけて、上海を流れる「黄浦江」の上流で約1万匹の豚の死骸が見つかったことが世界的なニュースとなった。

 浙江省の養豚業者が不法投棄した可能性が高いと伝えられたが、いまだに犯人を特定できていない。 しかし、上海市と浙江省は死骸を発見した直後に「ほとんどの豚の死因は「凍死」で、水質に影響はない」と発表した。

 3月中旬には四川省の川で約一千羽の「アヒルの死骸」が見つかった。 当局はこのときも「死因は不明だが、水質に影響はない」と発表した。
 さらに、4月上旬に「上海市の湖」と「重慶市の川」でそれぞれ大量の魚の死骸が見つかった。 死因について当局者は「電気ショックによる可能性が大きい」(上海)と地元メディアに説明している。 

 中国当局はこれらの問題について、メディアに対し独自取材をひかえるように指導し、記事を大きく扱わないように注文をつけているという。 地方紙記者によれば、動物の死因に感染症や水質汚染が疑われると発表すれば、社会不安が一気に広がり、担当者の責任が問われることもあるため、メディアをコントロールできる各地方政府は調べる前から「安全宣言」を出すことしか考えていないという。


 3月末、河北省滄県で井戸水が赤く変色したことが確認され、飲用した鶏が相次いで死亡し、近くの住民は飲用を控えたが、同県の環境保護局長は「水が赤いからといって安全基準を満たしていないといえない。 小豆を入れて炊けばご飯も赤くなる」と語ったことが問題視され、インターネットで批判された。4月になってから同局長は免職された。

 水質汚染を最初から否定する中国当局の姿勢に対し、市民の不安と不信感は一層高まっており、北京や上海などのスーパーでは外国製ミネラルウオーターや缶詰などを買い込む市民が増えているとの情報もある。









2013/03/14

中国・上海市の水源域で豚大量死に市民不安


( 2013.03.14 )

● 中国 汚染情報は「国家機密」? ふざけた隠蔽体質!



「上海市の水源域で豚大量死に市民不安」

 環境汚染が深刻化する中国で、上海市の中心を流れる主要水源の「黄浦江(こうほこう)」から5000匹以上の豚の死骸が回収され、市民に不安が広がっている。
 ウイルスに感染して死亡した豚が上流部で遺棄されたものとみられているが、市当局は「水質に問題はなく、水道水は安全に飲める」の一点張り。

 中国では環境汚染に関する情報が“国家機密”という厚いベールに覆い隠されてきた。開催中の全国人民代表大会(全人代=国会)でも問題になっており、情報隠蔽(いんぺい)に対する人民の不満は高まるばかりだ。


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■ 5000匹超える 

 「黄浦江」は、上海市民2000万人の飲料水の源である。
そして今回の恐ろしい出来事は、市民が(中国版ツイッターの)微博(ウェイボ)に(豚の死骸の)写真を投稿したことで公になった 。
 中国の有名なエンゼル投資家である薛蛮子(シュエ・マンズ)氏は、自ら微博に投稿し、情報隠蔽を続ける当局を批判した。

  海外メディアによると、死骸が最初に見つかったのは今月(3月)の7日。3月10日に1200匹が回収され、12日には5000匹まで激増した。
 上海市当局は11日になって、「近隣地域と協力し、発生原因や大量の豚の遺棄場所の調査に入っており、川への投棄をやめさせる手段も検討している」などと説明。
 しかし、原因や人体への影響など詳細は明かさず、「水質汚染は確認されていない」と繰り返している。 

 これに対し、「国営新華社通信」は、豚の耳に付いたタグから「浙江省(せっこうしょう)」の上流部で遺棄され、流れてきた可能性が高いと報道。
 死骸はさらに増えるとの見通しを示した。 また「米・CNN」は、上海市の南にある「浙江省嘉興(せっこうしょうかこう)市」の地元紙が、3月6日に、「市内の村で1月に1万匹、2月に8000匹の豚が死亡し、その後も毎日300匹が死に続けている」と報じたことを伝えた。

  さらに英紙ガーディアンは、川の水質調査で感染症の原因となる「豚サーコウイルス」の痕跡が確認されたと報じている。ウイルスは人間には感染しないというが、上海市民はパニック状態だ。

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■データ開示を拒否

  中国では、微小粒子状物質「PM2.5」による大気汚染など環境問題が深刻化するなか、今月(3月)5日に開幕した全人代で温家宝首相が環境対策に全力で取り組むことは表明した。
 しかし、汚染の実態は人民にほとんど知らされていないようだ。

  ロイター通信によると、中国の弁護士が先月(2月)、環境保護省に対して土壌汚染に関する2年前のデータの開示を求めたところ、「国家機密」として拒否された。
 この弁護士は「環境問題というよりも、中国が長年抱えてきた政府の透明性の問題だ」と、怒りをぶちまけた。

  全人代の代表からも疑問の声が上がっており、常務委員会法制工作委員会の信春鷹(しん・しゅんよう)副主任はロイター通信に「この30年間、中国は輝かしい経済発展を遂げたが、同時に環境問題に関しては重い代償を支払った。
 今後はこの現状にノーと言わねばならない」と強調。 さらに上海の代表団の一人は、「知らないことがパニックを引き起こす」と警告している。 

 PM2.5の観測情報は、北京市民の怒りを受け昨年からようやく公開されるようになったが、水質や土壌汚染はなお闇の中だ。果たして上海市民は今回の豚の大量死の真相を知ることができるのだろうか。












2013/02/10

ミツバチ謎の失踪、農薬の組合せが原因か?


( 2014.07.11 )


● ミツバチの集団失踪に農薬の関与が懸念!


 ミツバチは蜜や花粉を求めて、1匹で1日に数百から数千もの花々をめぐっている。1日の終わりには迷うことなく巣へ帰っていくが、その距離は時に8キロにもなる。そしてミツバチは“8の字ダンス”によって、仲間に花のありかを知らせる。これらはすべて、ミツバチの生存に欠かせない能力だ。

  ところが、特定の農薬の組み合わせに長期間さらされた場合に、ミツバチの花粉採集の遂行能力が損なわれる可能性があることが、最新の研究によって明らかになった。 「こうする能力が少しでも損なわれれば、生存の可能性に大きな影響が出る」とイギリス、ニューカッスル大学の神経科学者で今回の論文の共著者、ジェラルディン・ライト(Geraldine Wright)氏は言う。

  ライト氏らの論文のように、ミツバチの生存能力が脅かされつつあることを示す研究は、このところ増え続けている。2006年以降、何百万匹ものミツバチが急速に姿を消す事例が世界の各地で報告されていて、「蜂群崩壊症候群(CCD)」と呼ばれている。研究者らはこの現象に農薬が関与している可能性があると見て研究を続けている。 「農薬がCCDをはじめ、花粉媒介昆虫(ポリネーター)の集団失踪に関与している可能性は極めて高い」とライト氏は言う。

  ミツバチは蜜と花粉を豊富に含んだ花を探し当てるのに、“嗅覚記憶”という能力を使っている。短時間で学習し、記憶し、仲間とコミュニケーションをする能力のおかげで、ミツバチは非常に効果的にエサを集められる。8の字ダンスによってエサのありかを仲間に知らせるのも、その方法の1つだ。

  ミツバチによる植物の花粉の媒介は、私たちの口にする食物の約3分の1に関係している。野生動物の口にする食物についても同様の影響がある。

  これまでの研究によって、ある種の農薬がミツバチの学習・記憶能力に影響を及ぼすことが示されている。ライト氏らのチームの行った調査は、複数の農薬が組み合わさることで、ミツバチの学習・記憶能力に、さらに深刻な影響が生じる可能性を追究したものだ。 「ミツバチは花の色や香りを、得られるエサの品質と関連づけて学習している。ところが農薬は、この行動に関係する神経に影響を及ぼす。(影響を受けた)ミツバチは、コロニーの仲間とのコミュニケーションが難しくなる場合がある」とライト氏は説明する。

  ライト氏らは古典的な手法で実験を行ったが、これには「吻伸展反射の嗅覚条件づけ」という用語が用いられている。平たく言えば、ミツバチはエサのにおいを嗅ぐと、吻(ふん、口先の部分)を突き出す反応を見せるのだが、これを実験に利用するというものだ。

  実験では、まずミツバチをコロニーの入口のところで捕獲してきて、1匹ずつガラス瓶に収めたうえで、プラスチックの保存容器に入れる。これらのミツバチには3日にわたって、致死量に至らない程度の農薬を加えたショ糖溶液を与える。その後、10分間の短期記憶と24時間の長期記憶について検査を行う。

  この研究によると、農薬が複数組み合わされると、農薬が1種類のみの場合よりも、ミツバチへの影響ははるかに大きくなる。「このことが特に重要なのは、私たちが使った農薬のうちの1種はクマホスといって、ミツバチヘギイタダニ(CCDに関与していると考えられている害虫)を退治する“薬”として世界中で使われているからだ」とライト氏は言う。

  つまりこの農薬にはダニを殺す効果があるものの、それと同時にミツバチにも作用して、ほかの農薬による中毒などの影響を受けやすくしているおそれがある。

  花粉媒介昆虫の保護を訴えるポリネーター・パートナーシップ(Pollinator Partnership)のスティーブン・ブックマン(Stephen Buchmann)氏は、ライト氏の研究には参加していないが、花粉媒介昆虫は世界において重要な役割を果たしているのに軽視されていると力説する。「花粉媒介昆虫にとって最大の脅威は、生息環境の破壊や変化だ。花粉媒介昆虫の生息環境、自然のままの土地、食物を生産する農耕地のいずれも、私たちは急速に失いつつあるが、これらはすべて、私たちの生存と健康に不可欠なものだ。生息環境の破壊のほかに殺虫剤も、花粉媒介昆虫などの益虫を弱らせている」とブックマン氏はコメントしている。










2013/01/07

環境汚染問題-チェリノブイリ原発事故


( 2013.04.25 )

● <チェルノブイリ>建物崩落、ずさん修理が招く…政府報告書


 旧ソ連・ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で今年2月に建物の一部が崩落した事故について、1986年の爆発事故後のずさんな修理と老朽化が原因とする報告書をウクライナ政府の事故調査委員会がまとめていたことがわかった。

 同時期に造られたシェルター(通称「石棺」)もコンクリートや鉄筋部分の腐食が進んでおり、同原発のクプニー元副所長は「石棺を含め(86年に爆発した)4号機の建物が非常に危険な状態にあることを示した」と指摘。 26日に史上最悪の放射能漏れ事故から27年を迎える施設が崩壊の危険に直面していると警告した。

 86年に爆発事故を起こした4号機は、同年秋に完成した石棺で覆われている。 この石棺に隣接するタービン建屋の屋根と壁の一部が今年2月12日、約600平方メートルにわたって崩落した。 今年の冬は例年より雪が多く、非常事態省は当初「雪の重みが原因」との見方を示していた。

 だが調査委はこの見方を撤回し、2月末にまとめた暫定報告書で「積雪は想定された許容量を超えなかった。幾つかのマイナス要因が重なって屋根の留め具が壊れた」と結論づけた。 タービン建屋の一部は86年の爆発で吹き飛ばされ、翌87年に造り直された。 修理箇所が建物に想定外の負荷をかけ腐食や稚拙な溶接が留め具の損壊につながった可能性があると分析している。  
 ウクライナ政府は石棺とタービン建屋の一部を覆う金属製の「新シェルター」を2015年に完成させ、その中で古い建物を解体する方針だが、クプニー元副所長は「完成が遅れれば(石棺を含め)建物損壊の可能性が高まる」と警告している。



(チェリノブイリ原発事故問題について)


● チェルノブイリ原子力発電所事故(ちぇるのぶいりげんしりょくはつでんしょじこ)

 1986年4月26日に、ソ連邦ウクライナ共和国の首都キエフ市の北方130キロメートルに位置するチェルノブイリ原子力発電所4号機で起こった20世紀最大、最悪の大事故。
 事故は典型的な「反応度附加事故」すなわち原子炉暴走事故であり、水蒸気爆発、水素爆発あるいは化学爆発が起こった。
 その結果3人の従業員が即死し、うち1人は遺体も収容できず、事故後につくられた事故炉を覆う「石棺」内にそのまま埋葬されている。

 爆発のため重量1600トンもあるコンクリートの上部生体遮蔽(しゃへい)盤が垂直に立ち上がり、それとともに圧力管と蒸気水分離器への鋼管との接合部が一斉に破断した。
 原子炉建屋上部は崩壊し、クレーンが落下して炉心を破壊した。 過剰反応度の加わった核燃料は、ばらばらになって飛び散り、タービン建屋、炉心上部など30か所で火災が発生した。

 すぐに駆けつけた消防士の決死の活躍で、翌朝までにこの火事はほぼ消し止められた。 しかしこの高放射線下の消火作業のため、消防士や作業員など200人あまりに急性の障害があらわれ、86年7月末までに31人が死亡した。
 チェルノブイリ事故の最大の特徴は、事故後に起こった炉心黒鉛の火災である。 通常の条件では発火しがたい黒鉛がなぜ火災を起こしたかについては、現在でも原因不明である。 しかし黒鉛は事故後も1986年5月1日ごろまで燃え続け、それとともに大量の放射性物質が上空1800メートルまで吹き上げられ、全ヨーロッパに広がった。

 一部は日本にまで到達し、フォール・アウト(放射性降下物)として観測された。 この火災を消すために軍用の重ヘリコプターを用いて、炉心上部へホウ素化合物、ドロマイト、砂、粘土、鉛など5000トンが投下されたが、あまり有効ではなかったようである。 結局、炉心黒鉛が燃えつきてから、しばらくして鎮火したものと推定されている。

1.チェルノブイリ原子炉の構造


 チェルノブイリ原子力発電所はRBMK‐1000型とよばれる黒鉛減速沸騰軽水冷却方式の電気出力100万キロワットの原子炉(黒鉛減速軽水冷却炉)6基を建設する計画で、4号機までが完成して運転中であった。
 5号機と6号機は80%ほど工事が進んでいたが、事故後に放棄された。 事故を起こした4号機は1983年12月に運転を開始したばかりの最新鋭機であった。 RBMK型は、1954年世界に先駆けて運転を開始したオブニンスク原子力発電所の流れをくむソ連独自の方式で、圧力容器のかわりに圧力管とよばれる金属パイプに核燃料体を入れ、それを黒鉛パイル中に貫通させて炉心を構成している。

 中性子経済がよく、炉を停止させずに燃料交換が可能なことなど多くの長所をもち、また大型の圧力容器の輸送をせずにすむことなど大陸国ソ連の国情に適していたために、ソ連では原子力発電の主流の地位を占めていた。 一方、短所としては原子炉の反応度の温度係数が正になりうること、熱応力が全金属構造物・燃料要素・黒鉛に蓄積しやすいこと、圧力管の数がきわめて多く、また炉心体積も大きいため、制御システムがきわめて複雑となることなどがあげられる。

2.事故の原因


 ソ連の国家原子力利用委員会は国際原子力機関(IAEA)の主催した専門家会議(1986年8月25日~29日、ウィーン)に事故報告書を提出した。 
 それによれば、事故当時、発電所ではタービン発電機の慣性力を利用して、停電時などに際してどれだけの非常用電力が得られるかを調べるための実験に熱中したあまり、禁止されていた原子炉の低出力領域で、ほとんどすべての安全装置を解除したままで実験を強行した。そのためBMK炉特有の正の温度係数領域に入ってしまい、緊急停止操作もまにあわず暴走(反応度附加事故)に至ったものとされている。

 RBMK炉の安全性に対する過信と、事故に結び付いた行為の危険性についての自覚がまったく欠如していたといえる。 ソ連では実験関係者を重大な規則違反の廉(かど)で裁判にかけ、最高10年の禁錮刑を含む厳しい判決が下された。 ソ連のIAEAへの報告書は、のちにIAEA事務総長の安全諮問機関であるINSAG(International Nuclear Safety Advisory Group)から、そのNo.1報告として公刊されたが、さらにその改訂版がINSAG‐No.7として公刊されている。

 しかし、1991年のソ連の崩壊後、困難な社会・経済事情のため、事故についての科学的究明の努力は部分的にしか行われておらず、黒鉛火災の原因・経過、その鎮火のメカニズムについてさえ明らかにはされていない。

3.原子炉の埋葬と周辺地帯の除染


 黒鉛火災の鎮火ののちも、毎日数千キュリーもの放射能放出が続いた。 放射能放出による被害を防ぐためには、事故炉をしかるべき構造物で覆うことが必要であった。 それが通称「石棺」とよばれるもので、まず建屋基礎の下にコンクリート片からなる人工的放熱層がつくられた。
 この工事のために全国から鉱山労働者が動員され、トンネルが掘られた。 事故炉の周辺は厚さ1メートル以上のコンクリート壁で囲まれ、屋根は太い鋼管を並べて葺(ふ)かれた。

 内部には各種のセンサー(温度、圧力、放射能レベルなど)が備えられて、専門家の立ち入りが可能なようになっている。 当初の設計では石棺の耐用年数は30年であったが、最近の調査では放射能の漏洩(ろうえい)なども目だち始め、その改修が必要とされている。改修の費用をヨーロッパ諸国が負担するかわりに、ウクライナはチェルノブイリ原子力発電所を2000年までに閉鎖するという話し合いが行われた。

 同国のエネルギー事情が悪いために閉鎖が実行されるかどうかは不透明であったが、2000年2月にウクライナの大統領レオニード・クチマが年内閉鎖を表明、先進7か国(G7)の総額3億ドル(約315億円)の経済支援をもって12月に全面閉鎖された。

 事故当時はソ連の威信をかけて隣接する原子炉の運転を継続することが決定されたので、25万人に達する軍隊が動員され、発電所周辺30キロメートル圏内の要所要所の放射能除染作業が強行された。

 それはブルドーザーなどで表土をはぎ取り、それを深い穴に埋める作業であった。 原子炉に通ずる主要な道路に沿った村落や、林などはすべて取り払われ「埋葬」された。
 これらの汚染除去や石棺の建設などは高放射線下の危険な労働であり、それに携わった人々は「リクビダータル」とよばれている。 ロシア語の「清算人」という意味から転じて、被曝(ひばく)した人と同じ意味に用いられている。 その総数は60万人と推定されているが、ソ連の崩壊という激動の時期とも重なって正確な数は不明である。

 発電所にもっとも近い従業員の居住地であったプリピアーチ市の全人口4万5000人は事故翌日の27日午後から全員強制退去させられた。 またチェルノブイリ市(当時人口1万6000人)を始め周辺30キロメートル以内に居住する住民、計11万2000人は数万台のトラックなどによって、すべて強制退去させられた。
 農家の家畜も一緒に移動した。 従業員はその後、発電所から50キロメートル東に離れた所に建設された新しい町「スラブチッチ」に居住し、そこから鉄道で通勤するようになった。 途中で二度乗り換え、そのたびに衣服や履物を交換する。 勤務は原則として2週間交替である。 移住した住民のなかには無断で元の住居に戻っている人もおり、当局もそれを黙認している。
 その数は30キロメートル圏内で数千人に達しているという。

4.放射能の拡散


 世界に最初に事故を報じたのは1500キロメートル離れたスウェーデンのフォルスマーク原子力発電所であった。 このことからも推測されるように、また放射能の放出が5月中旬に至るまで続いたこともあり、気象条件に支配されつつ、放射能はヨーロッパ全域に拡散した。
 放出された全放射能量は約10エクサベクレル(エクサは1018を示す。国際単位系の接頭語)=2.8億キュリーに達したと推定される。

 原子炉内にあったヨウ素の50~60%とセシウムの30~35%が、また希ガスはおそらく全量(6.3エクサベクレル)が放出されたと考えられている。 最大の放射能汚染を受けたのはチェルノブイリ原子力発電所のすぐ北に位置するベラルーシ共和国であり、全放出量の70%以上が同国に落下したのである。

 事故翌日の1986年4月27日および28日はベラルーシ全域は低気圧の影響下にあり、とくに28日には滝のような豪雨が降っていた。
 29日から5月6日にかけて、風はバルト海から南の方向へと変わり、5月8日からはまたチェルノブイリから北へと変化した。 このような4月26日から5月10日までの雨を含む気象条件がベラルーシの汚染を大きくした理由であった。

 セシウム137の濃度が1平方メートル当り37キロベクレル(これは1平方キロメートル当り1キュリーに相当する)以上の汚染地域がベラルーシでは全国土面積の23%に達している。
 これに対しウクライナでは5%、ロシアでは0.6%であった。 ベラルーシの汚染地域の面積は北海道のほぼ半分に相当し、そこに居住する人口は220万人で同国人口の5分の1に達している。

 1989年に公式に発表された汚染地域を示す地図は、三つの共和国の約2万5000平方キロメートル(四国の面積が約1万8000平方キロメートル)、2225居住地区が1平方メートル当り185キロベクレル(1平方キロメートル当り5キュリー)を超えるセシウム137の地表汚染を有することを示している。
 これらの地域では外部照射に基づく被曝線量だけでも年間4.38ミリシーベルトに達し、そこに住み続けたならば医学的検診が必要なレベルに達することになる。 この事故で短期および長期の放射線状況を支配している放射性核種は、ヨウ素(おもに131I)、セシウム(134Cs、137Cs)、ストロンチウム(おもに90Sr)、プルトニウム(239Pu、240Pu)の四つであり、そのほかに放射性の高い核燃料破片(ホットパーティクル)が放出された。

 これらの核種は地表から0~5センチメートルくらいの表層部に存在し、事故後10年経っても地中にほとんど浸透していない。したがって風などによって簡単に移動するなど対策を困難にしている。

5.健康への影響


 1991年IAEAの諮問委員会は、「住民に直接放射線被曝による健康障害はみられない」という報告を発表した。 しかし、これに対しては、ベラルーシ、ウクライナ両国の専門家から厳しい反論が出された。 事故から10年後の96年4月ウィーンで開かれたIAEA主催の国際会議でWHO(世界保健機関)の「チェルノブイリ事故の医学的影響に関する国際プロジェクト」の結果が発表された。
 それによると、子供の甲状腺癌(がん)がロシア、ベラルーシ、ウクライナ3国で著しく増加し、とくにベラルーシでは事故前に比べて30倍、汚染のひどい州では100倍に達し、また白血病が事故処理作業員の間では平均の2倍であるとされ、91年のIAEA報告はこの事実によって否定されたことになる。

 広島・長崎の被爆者には少なかった甲状腺癌の多発がとくに小児で顕著であることが確認された。 その原因が高レベルのヨウ素131の汚染とヨウ素欠乏地帯が重なった地帯に多発していることが証明されている。 事故の被災者の総数は710万人と報告されているが、従来グレーゾーンといわれてきた0.5~1シーベルトの範囲の低線量大量被曝者が多数を占めており、その医学的影響を明らかにするためには今後なお膨大な医学的・疫学的研究が必要となるであろう。