( 2014.11.15 )
● 赤トンボ減少の背景に新農薬の使用が!
20年ほど前までは、日本中の至るところで見られた赤とんぼ(アキアカネ)。これが’2000年前後を境にして、半数以上の都府県で1000分の1以下に激減しているという研究結果が報告されている。
研究者によると「アキアカネの個体数については、過去の詳細なデータがほとんど残っていないため、残されている数少ないデータをもとに減少パターンを推計したところ、2000年前後を境に全国的な激減が起きていた」という。
その原因としては、減反政策による田んぼの減少や、温暖化による環境の変化、湿田の乾田化などの影響が考えられるが、しかし急激な減少は、それだけでは説明がつかないという。
そこで研究者らが指摘するのが1990年代に認可された新農薬の使用。
「イミダクロプリド」、「フィプロニル」といった成分を含む新しいタイプの農薬で、「浸透性殺虫剤」と呼ばれ、イネの育苗箱用殺虫剤として広く使われるようになる。
稲の苗が、根から農薬の殺虫成分を吸収、その葉などを食べた害虫を殺すというもので、田植え後の農薬散布の手間が省け、成分が環境中に撒かれないことから“エコ”な農薬ともいわれていた。
新農薬(浸透性殺虫剤)と、従来の農薬を使用した場合のアキアカネ羽化率を比較した結果、従来の農薬を使った場合は、農薬を使用しなかった場合と同程度の羽化が見られたが、新農薬タイプの「フィプロニル」を用いた場合はまったく羽化せず、同様の「ジノテフラン、イミダクロプリド」といった殺虫剤でも、30%ほどしか羽化しなかったという明らかな違いが見られたことから、新農薬の普及とアキアカネ減少には、因果関係があるのではないかとの研究結果が出された。
さらに、各種の農薬(殺虫剤)の都道府県別流通量から推定される地域別使用状況から、新農薬タイプの出荷量が増加した地域と、アキアカネが減少した地域の一致が見られたことから、アキアカネ激減の要因は、フィプロニルなど新農薬の増加だということがほぼ明らかになったと言う。
例えば、福井県のA市は、今もアキアカネの大群が見られ、全国でも希少な生息地の一つであるが、A市で多く使われているのは「カルタップ」という成分の旧来からの農薬であり、一方、隣接する地域でも「フィプロニル」を成分とする新農薬タイプを使っていたところでは、アキアカネの数が激減していると言う。