2015/05/20

ミツバチ大量死!(続報)


( 2015.05.20 )

● (ミツバチ大量死の続報) 米国が原因究明と予防で特別チームを!


 米国・オバマ政権は、近年、ミツバチの死亡率が急激に上がっている問題で、農薬使用との関連性を究明し、死亡率を改善する取り組みを支援すると発表。
 最近は、特にミツバチの体力が弱まる冬の間の死亡率が上昇しており、今年の冬は23%に達し、政権の目標とする死亡率15%を大きく上回っている。 また、米農務省は今月に入り、4月までの1年間の死亡率は42%に達したと発表している。

 原因について、研究者らは多くの可能性を調査しているが、その1つが殺虫剤、特に広範に使われているネオニコチノイド類の農薬である。
 殺虫剤はまず作物の細胞に吸収された後、花粉や蜜に広がる。 報告書は、米国ではミツバチが多様な農作物の受粉に使われるため、ネオニコチノイドからさまざまな影響を受けていることを示したとしている。

 米国・環境保護局(EPA)は、殺虫剤による被害の可能性や、ミツバチへの影響軽減策についての調査を、今後数年間にわたり主導するとともに、今後のミツバチの健康調査を終えるまでは、この種の化学物質の屋外での使用許可を与えないことを発表した。

 ここ10年間のミツバチ死亡の急増で、研究者らはその解決策究明に懸命になっている。 また、全米養蜂協会によると、過去20年に養蜂業者数が少なくとも半減しているとし、養蜂業者の減少で、毎年150億ドル(約1兆8000億円)相当の農作物の受粉をミツバチに頼っている米農業者にとって大きな痛手となっている。

 今回の環境保護局(EPA)の措置に対して、一部の環境保護団体は、ミツバチの保護には不十分との理由からネオニコチノイド系・殺虫剤のすべてを使用禁止にするよう求めている。

 一方、殺虫剤製造会社の業界団体の「クロップライフ・アメリカ」は、殺虫剤を適切に使用すればミツバチが影響を受けることはないと反論している。

 研究者らは、殺虫剤などの農薬の他に、幾つかの要因がミツバチに影響を与えていると考えている。 質の高いエサが手に入らないことによる栄養不足や、作物受粉のために人為的にしばしば巣を移動させることなどだ。
 もう一つの危険要因は「バロア・マイト(ミツバチヘギイタダニ)」と呼ばれる吸血ダニで、ミツバチを弱らせ巣に病気を持ち込みやすくさせるという。

 いずれにしても、近年のミツバチの減少は、北米や欧州など世界各地で報告されているが、未だに根本的な原因の解明と、有効な対策には至っていない。



( 2015.04.23 )

● ハチが農薬入りの餌好む傾向を確認! 英科学誌「ネイチャー(Nature)」


 英科学誌ネイチャー(Nature)最新号に、人間がニコチン依存症になるように、ある種の殺虫剤にはハチに対する中毒作用があるとする研究論文が発表され、それによると、ハチは殺虫剤を含む餌を敬遠するどころか、むしろ好む傾向が実験で確認されたという。

 英国ニューカッスル大学のジェラルディン・ライト氏らのチームが行った研究で、ハナバチに対して中毒性の誘引作用を持つと指摘されたのは、「ニコチン」の化学構造を基に合成された「ネオニコチノイド」系殺虫剤。
 農薬として広く使われ、作物が成長する際に吸収されて害虫の神経系を攻撃するよう作られている。

 だが、「ネオニコチノイド」には、作物の受粉を媒介するハチの記憶と位置把握機能に混乱を引き起こし、蜜を探し回る能力に悪影響を及ぼす可能性がこれまでの研究で示されていた。

 ライト氏は「今回の研究で、ハチが殺虫剤で汚染された餌を好んで食べるという証拠が得られた」と指摘。
 この結果は、「ネオニコチノイド」には「ニコチン」と同様に薬物のような中毒性があり、それを含有する餌をより魅力的に感じさせる働きがあるのかもしれないことを示唆していると述べている。

 欧州や北米など世界各地では、ハナバチが一斉に姿を消す「蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder、CCD)」と呼ばれる現象が起きている。
 CCDの発生原因としては、ダニ、ウイルス、カビ、殺虫剤、これらの要因の相乗作用などが挙げられている。

 ハチは、昆虫による植物の受粉媒介の8割を担っており、その経済効果は世界で年間1530億ドル(約18兆3000億円)を超えると推計される。

■「薬物のように作用」


 研究チームは、自然界に咲く花の蜜に含まれているレベルの複数の濃度の「ネオニコチノイド」系殺虫剤3種(イミダクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン)を添加したショ糖液と、全く含まないショ糖液を用意し、マルハナバチ数百匹とミツバチ数千匹に自由に摂取させる実験を行った。

 「餌を探す年齢のハチはいずれの種も、濃度を問わず3種類のネオニコチノイド系殺虫剤全てを敬遠しなかった。 それどころか、「イミダクロプリド」と「チアメトキサム」を含む液が出る管を選んで摂取していた」という。 ただ、いずれのハチも、「クロチアニジン」を好む傾向は示さなかった。

 ライト氏は実験について「これらの化合物には、ハチの脳に対して薬物と同じように作用する効果があることを示していると思う」と説明している。

 殺虫剤が使用されている地域では、ハチに殺虫剤に汚染されていない餌を与えるという対策が一部で提案されている。 だが、そうした対策を講じたとしても、ハチはあえて汚染された植物の蜜を好んで摂取する可能性があることを、今回の結果は意味している。