2010/03/10

2.公害の分類

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「公害」を、その発生源、場所、被害現象などから分類してみる。

(1) 企業型公害

  企業の生産過程から排出された汚染物が、水(河川、地下水、海水)、 大気、土壌などに排出されたことにより特定の地域が汚染され、 重大な被害を及ぼすもので、かっての日本の公害の70~80%が、 このタイプと言われていた。

(例)・・・ 水俣病・イタイイタイ病・四日市ぜんそくなど



(2) 都市型公害
 
 都市化( 交通、物流、人口の集中化 )にともない、ビルの冷暖房、自動車排ガスによる大気汚染、生活排水・合成洗剤による水汚染、騒音、 高層ビル、マンションによる日照被害など。
特徴として被害者自身が、汚染物質を排出し加害者となっている場合もある。

(例)・・・ 光化学スモッグ・小児ぜんそく・アレルギー性疾患(化学物質過敏症含む)・がん・シックハウス症候群など



(3) 食品公害/薬品公害

 飽食の日本、今私たちは、多種多様な食品を手にすることが出来るようになった。それと共に、食品から摂取される人工化学物質の量が増加傾向にあり、健康被害を増加させている。
 かっての食品公害は、製造過程などで混入した有害物質による中毒症状などの健康被害が主であったが、近年は、食品添加物や残留農薬( 輸入農産物のポストハーベストなど含む )、化学肥料、抗菌性物質( 畜産食肉、養殖魚などの生産過程において、投与される薬剤など )により、食品に添加された化学物質を、極微量ながらも日常的に摂取することによる健康被害が懸念されてきている。

(例)・・・ カネミ油症事件・サリドマイド・森永ヒ素ミルク事件・中毒症状・環境ホルモン・ガン・アレルギー性疾患(化学物質過敏症含む)など



(4) 基地型公害

 主に国内の駐留アメリカ軍基地での航空機発着訓練、射撃訓練場などの騒音、被弾・墜落事故などによる、周辺住民の生活環境侵害、基地施設建設による自然環境破壊。
 近年、本州の駐留アメリカ軍基地に於いては、日本への基地返還や移転、訓練縮小が進み、徐々に改善されているが、アメリカ軍基地の集中する沖縄では、基地に依存せざる得ない防衛計画、経済問題と、生活環境・自然環境問題とが対立し、いまだに解決の糸口さえ見えない。
(例)・・・騒音・事件/事故の懸念・自然環境破壊(実弾演習・基地建設含む)など


(5) 大量消費型公害

 1970年代以降、豊かさ・便利さ・快適さを求め行き着いた大量消費時代。大量生産、大量消費社会は、資源の浪費と使い捨てにより成り立つものであり、その結果、大量の廃棄物を生み出し、この処理が大きな社会問題になってきた。

 耐久消費財(電化製品・車など )などの固形廃棄物、プラステック、発泡材、ビニールなどの処理困難な包装物質、企業から排出される産業廃棄物、原子力関連施設から出される放射性廃棄物など、日々排出されるこれらの廃棄物が、「ゴミ戦争」とも呼ばれる新しい公害問題を生み出した。

 廃棄物により自然の海岸線は埋め立てられ、緑豊かな源流部の谷間が埋め尽くされ、海域を汚染し、水源を汚染する「環境破壊」と言う名の公害。
 これらは大量生産による大量消費生活様式を、マーケッティングの戦略とした、企業の責任と同時に、それを選択した消費者側にも責任がある。
 
 個人の便利さだけを考えずに、社会全体にとっての有用性を考慮し、これからの生活様式(ライフスタイル)を選択すべきである。
いわゆる完全リサイクル型(循環型)の社会である。

 近年、欧米の先進国を中心とした環境保護、リサイクル運動のたかまりのなか、我国でもリサイクル法の設立、ごみ分別収集による再資源化、ごみ収集の有料化によるごみ減量対策などで、ごみ問題への意識が一般市民にも浸透しつつあるものの、相変わらず大量のごみが街中を走り回っている。



 (2010.03.10)
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1.公害の定義

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(1) 公害とは、

  「公害」という言葉の厳密な定義については、さまざまな意見があると思うが、要約すれば人間の社会活動( 産業活動や都市生活など )により、自然や生活環境の汚染、破壊によって直接的、間接的に生ずる健康障害、生活環境への侵害・被害などの現象であると言える。
 その結果が、「公害病」と呼ばれる健康被害や、環境破壊による動・植物への重大な被害を及ぼす社会的災害である。
 具体的な形態は、大気汚染( 悪臭なども含む )、水汚染、土壌汚染、騒音、振動、日照権侵害などにより、直接的な健康被害や生活環境の破壊のみならず、自然( 地形、動・植物とその生態系などを含む )、文化財の破壊などにまでおよぶと考える。

  「公害大国日本」とも言われた過去において、「我が国の公害対策技術は、世界に誇れるもので、公害と言う言葉はもはや過去のもの」などと公言する政治家や、企業経営者がいる。
 近年、産業界では、「環境にやさしい」とか、「環境によい」などと言った言葉を、盛んに使うようになった。
「環境にやさしい」などと言うと、その企業が、社会的に特別「何かとてもいいこと」をしている様に聞こえるが、なんのことはない、実は「公害対策をしています」と言っているようなもので、企業としては当たり前のことなのである。
 「公害」と言う言葉にかわり、「環境破壊」と言う言葉が多く用いられるようになったが、その本質は変ることなく、さらにその原因( 発生源、汚染物質 )や被害は、今後ますます広範囲にわたり多様化する傾向にある。

 (2010.03.10)
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