( 2013.04.10 )
● 「調査する前から、まず安全宣言!」これが中国の基本?
鳥インフルエンザ(H7N9型)の感染が広がりを見せている中国で3月以降、各地の川や湖で大量の動物の死骸が相次いで発見され、飲用水や食の安全に対する市民の不安が高まっている。
風評被害の拡大を警戒する中国当局は、メディアに対し報道規制を強める一方、はやばやと「安全宣言」を発表するが、それが市民の不信感を一層募らせている。
3月上旬から中旬にかけて、上海を流れる「黄浦江」の上流で約1万匹の豚の死骸が見つかったことが世界的なニュースとなった。
浙江省の養豚業者が不法投棄した可能性が高いと伝えられたが、いまだに犯人を特定できていない。 しかし、上海市と浙江省は死骸を発見した直後に「ほとんどの豚の死因は「凍死」で、水質に影響はない」と発表した。
3月中旬には四川省の川で約一千羽の「アヒルの死骸」が見つかった。 当局はこのときも「死因は不明だが、水質に影響はない」と発表した。
さらに、4月上旬に「上海市の湖」と「重慶市の川」でそれぞれ大量の魚の死骸が見つかった。 死因について当局者は「電気ショックによる可能性が大きい」(上海)と地元メディアに説明している。
中国当局はこれらの問題について、メディアに対し独自取材をひかえるように指導し、記事を大きく扱わないように注文をつけているという。 地方紙記者によれば、動物の死因に感染症や水質汚染が疑われると発表すれば、社会不安が一気に広がり、担当者の責任が問われることもあるため、メディアをコントロールできる各地方政府は調べる前から「安全宣言」を出すことしか考えていないという。
3月末、河北省滄県で井戸水が赤く変色したことが確認され、飲用した鶏が相次いで死亡し、近くの住民は飲用を控えたが、同県の環境保護局長は「水が赤いからといって安全基準を満たしていないといえない。 小豆を入れて炊けばご飯も赤くなる」と語ったことが問題視され、インターネットで批判された。4月になってから同局長は免職された。
水質汚染を最初から否定する中国当局の姿勢に対し、市民の不安と不信感は一層高まっており、北京や上海などのスーパーでは外国製ミネラルウオーターや缶詰などを買い込む市民が増えているとの情報もある。