
(1) 公害の日常化
1960年代、戦後、日本経済は、かってないほどの高度成長をとげ、重化学工業化と大都市化をすすめながら、公害を野放しにしてきた。水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく、PCB汚染、光化学スモッグ、交通騒音、排気ガス汚染・・・・・。
この時期、公害問題と言えば、四大公害事件に象徴されるような、犯罪的とも言える企業公害が主であった。
1970年代、公害の主役は、企業公害に加え、公共事業、核家族化で急増した都市生活者における生活公害がふえはじめた。
高速道路、新幹線、港湾や都市部における自動車排気ガス、騒音、油汚染、ゴミ、合成洗剤汚染などに象徴されるような、流通、消費過程で発生する都市型公害が増加した。
(2) 公害の広域化
1980年代、大量生産、大量消費により、生活の便利さ、豊かさを求めた結果、大量に排出されるゴミ処理が、新たな公害問題として加わった。 この頃より公害は、かっての水俣病に代表される、かぎられた地域や、短期濃厚汚染物質に起因するいわゆる公害病だけではなく、ごく微量の化学物質の長期汚染による健康障害、或いは種々の環境汚染物や、食品、薬品などの複合汚染が、未来に重大な影響を示す可能性がでてきた。 自動車排気ガス、食品添加物、農薬、PCB汚染、環境ホルモン、ダイオキシン、オゾン層破壊、放射能汚染・・・・・。 これらの汚染物質は、さらに自然の生態系を撹乱し、地球規模(地球環境破壊)へと拡大している。 地域差や量的な違いはあるものの、一般市民の母乳や、北極海のアザラシからもPCBやダイオキシンが検出されいることからも、今や我々は、日常的にこれらの物質に汚染されている。
これまでの公害問題は、企業や行政など、公害の原因物質を排出した加害者側と、被害者側といった構図が、はっきりしていたが、現在の公害は、被害者がまた加害者でもあると言った構図が、日常生活の中でおこりうるのである。
すなわち、公害に反対するならば、自からが公害を出さないようなライフ・スタイルにかえることが、早急に求められている。
(3) 公害から環境破壊へ
近年、公害は一地域、国内だけの問題ではなくなった。越境汚染(汚染物質が国境を越えて遠くまで移動し、他の国や地域を汚染すること)である。
1960年代には欧州(ヨーロッパ)の工業国から排出された大気汚染物質(化石燃料(石油や石炭など)を燃やした結果発生する二酸化硫黄や窒素酸化物などの酸性物質で工場の排煙や自動車などの排気ガスに多く含まれるまれる。)が酸性雨となり、北欧(北ヨーロッパ)、ドイツ、イギリスの森林破壊や河川・湖沼の汚染と植生・生息動物など生態系を破壊した。 この時期は、アメリカの五大湖周辺の工業地帯の大気汚染がカナダの間でも問題となっていた。
1990~2000年頃になると、日本でも急速に経済活動を拡大してきた中国大陸や朝鮮半島から偏西風に乗ってくる大気汚染物質が急増し問題となってきている。 (2007年、国内では大気汚染対策が進み汚染物質が減少しているなか、西日本の広い地域に光化学スモッグ注意報が発令され、中国からの大気汚染物質が原因との憶測が流れた。)
温暖化と異常気象、オゾン層破壊、海洋投棄された産業廃棄物や、都市の河川からの流出した生活ごみが大量に海洋を漂流し、海洋動物(水産資源など)を汚染し、沿岸国に漂着ごみとして汚染を拡大させている。
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(2010.03.10)
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