2019/08/05

世界中で猛威ふるう感染症の「チクングニア」とは!


( 2019.08.05 )

● アジア・アフリカの熱帯地域を中心に拡大注意!


 チクングニアというのは聞き慣れない名前だと思います。病気の名前でもあり、ウイルスの名前でもあります。日本にはチクングニア・ウイルスは、まだ存在しません。よって、これは「海外の病気」となります。

 だが、夏休みで海外にお出かけの方も多いと思います。 また近年、海外からたくさんの外国の方がおいでになるようになったのはご存じの通り。来年のオリンピック・パラリンピック、その後行われる万国博覧会。この傾向にはさらに拍車がかかることでしょう。

 とにかく海外に行く人、海外から来る人が多いこの時代に、外国の感染症の知識は欠かせません。ですから、これまではなじみのなかったこういう感染症も、ぜひ頭の何処(どこ)かに入れておいていただきたいのです。



● ヤブ蚊が媒介。デング熱との同時感染も

 もともとチクングニアは1952年にアフリカのタンザニアで見つかったウイルス感染症です。ヤブ蚊に刺されることでウイルスに感染します。

 ヤブ蚊が媒介する感染症としてはデング熱が有名ですが、実はデング・ウイルスとチクングニア・ウイルスが同時に感染することも珍しくありません。よって、デング熱を疑ったら、チクングニアも一緒に調べたほうがいいです。

 当初はアフリカの病気と思われていましたが、ほどなくアジアなど熱帯地方のあちこちで流行していることがわかりました。その後、2007年にイタリアで、2013年以降に南北のアメリカ大陸で流行が起きて、世界中でチクングニアが猛威をふるっていること、その活動範囲がどんどん世界的に広がっていることが分かりました。

 たとえば、米国では2014~16年の間におよそ4000例のチクングニアが診断されています。日本にもチクングニアを媒介するヤブ蚊がいますから、ウイルスを持ち込まれたら流行してしまう危険があるのです。 米国CDC(疾病対策センター)が作ったマップを見ると、南北アメリカ、アフリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界中でチクングニアが広がっているのが分かります 。


● 激しい筋肉痛や関節痛が続くことも

 ちなみに、チクングニアを媒介するヤブ蚊は上述のデング熱やジカ熱のウイルスも媒介しますから、なかなか厄介です。

 発症は蚊に刺されてから1週間以内に起きることが多いです。最初は熱とか倦怠(けんたい)感といった、これといった特徴のない症状が出ます。熱は10日以内に自然に下がります。特別な治療薬は存在しません。

 で、チクングニアの厄介なところはその後です。一定の患者さんで筋肉痛とか関節痛が体のあちこちに起きるのです。これが、痛い。とても痛い。体を動かすの辛(つら)いくらい、痛い。

 実は「チクングニア」という名前は、アフリカの言葉で「曲がる」とか「前かがみに歩く」というような意味なんだそうです。あまりの関節の痛みで体をねじ曲げてしまう、ということで、この病気の特徴をよく表現しています。痛みは数週間、場合によっては年の単位で続くこともあるのです。他にも、皮膚のぶつぶつや腹痛、頭痛などいろんな症状も見られます。


● 一定の割合で重症化。死亡例も

 チクングニアは一般的に自然に治る病気です。が、たくさんの人がかかると一定の割合で重症化します。前述の米国の例では、4000人近い発症者のうち18%が入院を必要とし、4人が死亡しました。あまり、油断してはいけませんね。

 ちなみに、チクングニアは感染症法における全数報告対象の4類感染症です。ま、もっとも届け出たからといってなにか特別な公衆衛生上の対策があるわけじゃないのですけどね。患者さんは病気を広げないよう、蚊に刺されない工夫は必要ですが、人から人には感染しないので家族や友人、職場の方はそんなに心配しなくて大丈夫です。


● 虫よけにはディート(DEET)の塗布を

 先進国でも途上国でも、海外に行くときはいろんな感染症対策が必要です。蚊に刺されないのも大切なことです。具体的な方法としては、肌の露出をできるだけ避けるとか、ディート(DEET)という虫よけを定期的に使うのが大事です。

 DEETの効果はその濃度で分かるのですが、20%のDEETで1~3時間おきに塗り直すと効果が高いです。30%なら5時間以上効果があります。昔は、日本では濃度の高いDEETがなかったので、途上国に行くときは「現地調達」でした。最近、ようやく高濃度のDEET入り虫よけを売るようになりました。空港などでも売っていてとても便利です。

 DEETは2か月以上のお子さんなら(短期的に使えば)安全に使えます。授乳中だったり、妊婦さんにも大丈夫とありますが、妊娠している間はあまり海外には行かないほうがいいと思います、まじで。

 ちなみに、蚊を寄せ付けないブレスレットとか、サプリメントとか、超音波などを発する電気製品とか売っていますが、概(おおむ)ね効果は確認されていません。使わないほうが賢明です。