2014/07/11
野鳥の減少、殺虫剤が原因か?
( 2014.07.11 )
● オランダの研究者が殺虫剤の環境への影響を警告!
オランダの鳥類学者などによる研究グループは、現在、殺虫剤として一般的に広く使用されている「ネオニコチノイド」が、生態系の他の生物へも間接的に影響を与えている可能性があるとの研究結果を発表し、14種類の野鳥の個体数の減少に関係している可能性を警告している。
オランダのラドバウド大学とオランダ・野外鳥類学バードライフセンターの研究者らによる研究報告で、農業地帯に生息する鳥の個体数と表面水に含まれる薬品濃度の長期的データを比較した結果、一般的な「ネオニコチノイド殺虫剤」である『イミドクロプリド』が水中に高い濃度で含まれている地域では、鳥の個体数が年に平均3.5%減少する傾向にあると指摘した。
かって1962年に、米国の生物学者で作家のレイチェル・カーソン(Rachel Carson)氏が、その著書『沈黙の春(Silent Spring)』の中で、殺虫剤の『DDT』が野生生物の生態系に重大な影響を与えていると指摘、「ある日突然、鳥の歌声が聞こえなくなってしまった」のは殺虫剤が原因であると警告を発した画期的な本であった。
野外鳥類学バードライフセンターの鳥類学者で、今回の報告書の共著者であるルード・フォッペン氏は、当時カーソン氏が問題にしていた『DDT』などの「有機リン酸エステル」と、今回問題となっている「ネオニコチノイド」は、全く別の薬品ではあるものの、事態はほぼ同じであると指摘している。
「ネオニコチノイド」は、近年(約20年前から)、殺虫剤の分野では最も急速にそのシェアを伸ばしてきた農薬で、害虫駆除に高い効果を上げ、使用法も簡単なため、特に農業従事者の間では評判が高いと言われている。
従来のように殺虫剤液をタンクに入れて、広大な畑の農作物の上から散布するタイプの殺虫剤ではなく、あらかじめ農作物の種に「ネオニコチノイド」を薬品処理したもので、「浸透性」農薬と呼ばれている。
種の時点で薬品処理されているため、成長過程においても殺虫剤が作物全体に浸透し、殺虫効果が持続することで作物自体が害虫駆除植物と化し、バッタや根切り虫などの害虫が根や茎、葉、花など、どこを食べても同時に神経毒を摂取することになる。
この結果、「作物の頭から根の先までを殺虫剤で防護するということは、その花、花粉、蜜までも全てが有毒となることを意味し、対象とする害虫だけではなく、ハチなど有益な昆虫にまで害を与えてしまっている」と指摘する研究者もいる。
さらに、「ネオニコチノイド」は土壌の中に何年も残留し、そこに生えた他の植物まで、薬品に接触すればそれを吸収してしまうという。
今回の研究は、オランダの農業地帯でよく見られる14種の野鳥を対象として、その個体群の統計を調査したもので、対象となったほとんどの鳥は、昆虫を主な餌としているが、中には種子や穀類を食べる鳥もいる。このことから、「ネオニコチノイド」がオランダの鳥へ与える影響は、2通りあると考えられる。
第1が「ネオニコチノイド」の残留する昆虫や作物の種を餌として直接口から摂取した場合の影響で、通常なら昆虫以外の動物や鳥には安全であると報告されているものの、多量に摂取すれば命に関わる可能性もある。
第2が鳥たちの餌となる昆虫の減少が挙げられる。「ネオニコチノイド」は対象とする害虫だけでなく、他の種も殺してしまうので、鳥が食用とするハエ、バッタ、カメムシ、イモムシなどの虫の数までが減少してしまうことによる影響などが考えられる。
ただし、今回の研究報告書は「ネオニコチノイド」と野鳥の個体数減少の相関関係を示してはいるものの、殺虫剤が直接その減少を引き起こしているとは言っていない。
農薬の大手メーカーであるベイヤー・クロップ・サイエンス社は、「ネオニコチノイドの農薬としての使用は安全である」と主張し、「本薬品は厳しいリスク評価を受けており、説明書に記載されている通りの責任ある使用法を守れば、環境への安全性は確認されている」との声明を出している。